亡くなった人が遺言を残していない場合(すべての財産につき遺言を残していない場合も含みます)に、死亡時に有していた各財産(相続財産)を、それぞれどのように分けるかを決めるものです。
一方、遺言がある場合、遺言に記載のある財産については、遺産分割は必要ないということになります。
相続財産は、遺言がない場合、何もしなければ、原則的には、各相続人の共同の財産になります(※)が、どの財産がどの相続人になるかは決まっていな状況(遺産共有といいます)です。
そこで、各相続財産を誰のものとするかを定めるために遺産分割が必要になります。
※ 預金債権は、可分債権といって、遺産分割をしなくても、相続分に応じて権利行使できる財産とされてきましたが、平成28年に最高裁の決定が出て、原則的には、遺産分割をしなければ、権利行使できない財産となりました。
このほかの賃料債権、不当利得返還請求権、損害賠償請求権といった可分債権と言われる性質を有する債権については、これまでどおり、合意がない限りは、遺産分割の対象にならないと考えられています。
しかし実際には遺産分割をしなければ、権利の行使の方法等を定めることができないため、遺産分割の対象とする合意をすることも多いと思われます。
遺産分割そのものには期限はなく、遺産分割自体が遅れたことをもって罰則等があるわけではありません。
しかし、相続税の申告・納税には期限があります。
よくあるのが相続財産として不動産がある場合に、分割がなされず、そのまま相続人の一人が住み続けているという場合です。
他の相続人としては、相続財産を独り占めにしていると考えることがあります。
そこで、このような場合、遺産分割を行うよう求め話し合いを行う、話し合いが出来ない場合、調停をしていくということになります。
一方、独り占めにしていると言われる相続人の側としても、遺産分割をしたくてもできないということもあります。
例えば、不動産以外に財産がない、その不動産が居住の場所であり売却ができないといった場合です。このような場合、遺産分割は双方の相続人にとって容易ではありません。
このような場合、特に「理由がなく独り占めをしている」という誤解を与えないよう、早期にひざを突き合わせた話し合いを行うべきでしょう。
被相続人の生前や亡くなった後に預金が引き出され、その使途がわからないという使途不明金がある場合、まずは任意に取得した相続財産やその代価を相続財産に含めて遺産分割を行ったり、遺産分割とは別途その支払いを請求することになります。
しかし、応じない場合には、遺産分割調停では解決することができず、使途不明部分については、訴訟を提起することになります。
一方使途不明金があると言われている方は、使途を説明することになります。
よくあるのが、葬儀費用のために使った、入院費に使ったといったことです。
この場合、領収書等の資料を示したりして、使途の説明をすることになります。
特別受益の有無や評価について相続人間で協議がまとまらない場合には、遺産分割調停の中で受益者以外の各相続人が受益者に対して特別受益について主張立証していくことになります。
たとえば、不動産の評価に争いがある場合、遺産分割調停の中で、まずは裁判所から当事者に対し、固定資産税評価額、相続税評価額、地価公示価格等の公の資料のほか、不動産業者の査定書の提出を促されます。そして、合意可能な額や評価方法について検討を促されることになります。 当事者が提出した資料では評価について合意に至らない場合、不動産鑑定士の資格を有する専門委員に調停に関与させてその者から意見を聴取して知見を活用することが考えられます。 当事者間に合意が成立しない場合や、現地調査の必要があるなど複雑な事案で、鑑定費用を準備できる場合には、不動産鑑定士を鑑定人に選任して、鑑定が行われることになります。 ただし、たとえば借地権の存否に争いがある場合など、評価の前提条件について争いがある場合には、遺産分割調停とは別に、訴訟でこの点を確定する必要があります。
遺言の有効性に争いがある場合は、遺言無効確認訴訟など、訴訟でこの点を確定する必要があります。遺言の解釈に争いがある場合も同様です。
感情的な対立があり協議が進まないという場合もあります。
また、相続が発生するまでほとんど交流がない相続人がいることがあります。相続人は民法の規定に従って定められるため、親しい親しくないとは無関係であるため、それまで交流自体がない人とのやりとりが必要になることもあります。
住所を調べること自体困難な時もありますし、住所を調べて手紙を送っても何の応答もないということもあります。
こうした場合、調停を申し立てる方法が最もスムーズに物事が進むということも考えられます。
調停を起こすと、家庭裁判所から調停に出頭するよう促す書面が各相続人に届きますし、調停に出頭しない当事者に対して調停に出頭するよう促してもらうことも可能です。
話し合い自体も調停委員が間に入ってくれますので、心理的な負担も軽減されるといえます。
遺産分割について、当事者間の協議により合意できない場合には、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てることができます(民法第907条第2項)。
なお、遺産分割調停を申し立てることなく、いきなり遺産分割審判を申し立てることもできますが、この場合でも裁判所は事件を遺産分割調停に付することができ(同法第274条第1項)、実際にも、調停手続になじまないことが明らかな場合を除き、遺産分割調停に付されています。
遺産分割調停は、概ね以下の流れで進行します。
1)相続人の範囲の確定
2)遺産の範囲の確定
3)遺産の評価
4)特別受益・寄与分の確定
5)遺産の分割方法の確定
※ 平均所要期間
遺産分割調停の1回の期日は概ね2時間程度で、1か月半に1回程度期日が開かれるのが通常です。遺産分割調停が終了するまでの平均所要期間は、約1年です。
遺産分割調停は、家庭裁判所裁判官1名と調停委員2名からなる調停委員会により行われます。
調停委員は、調停に一般市民の良識を反映させる目的で、社会生活上の豊富な知識経験や専門的な知識を持つ人の中から選ばれることになっており、具体的には、原則として40歳以上70歳未満の人で、弁護士、医師、大学教授、公認会計士、不動産鑑定士などの専門家のほか、地域社会に密着して幅広く活動してきた人など、社会の各分野から選ばれ、遺産分割調停などの家事調停では、男女1人ずつの委員を選ぶように運用されています。
1)遺産分割調停申立書及びその写し(相手方の人数分)
2)事情説明書
3)戸籍関係の証拠書類
・被相続人の出生から死亡までの全戸籍の除籍謄本・改製原戸籍謄本(原本)
・相続人全員の戸籍謄本(原本)
・相続人全員の戸籍の附票又は住民票(原本、取得後3か月以内)
4)遺産関係の証拠書類(該当する場合で必要に応じて)
・登記簿謄本又は全部事項証明書(原本、取得後3か月以内)
・固定資産評価証明書(原本、直近年度分)
・住宅地図、公図の写しなど、不動産の位置・形状等を示す書類
・建物の平面図
・借地借家に関する契約書の写し
・預貯金通帳の写し又は相続開始時の残高証明書の写し
・株式、国債、投資信託等の内容を示す文書の写し
5)遺産分割の前提に関する証拠書類(該当する場合で必要に応じて)
・遺言書の写し
・遺産分割協議書の写し
・協議が不成立に終わった遺産分割協議書の案の写し
・前の相続に関する遺産分割協議書の写し
6)相続債務に関する証拠書類(該当する場合で必要に応じて)
・消費貸借契約書、抵当権設定契約書の写し
・支払予定表の写し
まず、遺産分割調停は、当事者間で合意が成立し、調停委員会又は裁判所がその合意を相当であると認めた場合には、遺産分割調停が成立したものとして終了します(家事事件手続法第268条)。
また、遺産分割調停で合意が成立する見込みがない場合または成立した合意が相当でないと認められる場合には、調停が成立しないものとして調停を終了させ(同法第272条第1項)、この場合、手続きは遺産分割審判に移行します(同条第4項)。
もっとも、相続人が誰か、遺産が何か、遺言が有効か、といった点は遺産分割の前提問題として、調停や審判ではなく、民事訴訟で決めなければならないとされているため、これらの点で合意が成立しない場合には、審判に移行しません。この場合は、裁判所により調停の申立てを取り下げるよう促されます。
なお、わずかな意見の相違により調停不成立となって遺産分割審判に移行するのを避けるべく、家庭裁判所は調停が成立しない場合において相当と認めるときは、遺産分割調停手続の中で審判を行うことができ(調停に代わる審判、同法第284条第1項)、この審判がなされたときにも遺産分割調停は終了することになります。
遺産分割審判に移行します。 遺産分割審判の段階では、その前の遺産分割調停段階において当事者の基本的な主張が既に提出されているはずなので、まず既に提出されている主張を前提に争点を明確にし、その点につき判断するのにどのような事実を調査することが必要かを検討します。 そのうえで、裁判官により当事者に直接質問する審問や、家庭裁判所調査官による調査等の方法により、争点につき判断するために必要な調査をすることになります。
遺産分割審判に不服がある場合には、審判書謄本が送達されてから2週間以内に不服を申し立てることができます(即時抗告といいます。家事事件手続法第198条第1項第1号)。
即時抗告を行うと、遺産分割審判を行った家庭裁判所を管轄する高等裁判所が、遺産分割審判の当否について判断します。
即時抗告審においても、審問が開かれ、当事者の陳述を聴取されると同時に、必要な事実調査が行われたうえ、判断を下します。
なお、即時抗告審の判断に対し、憲法違反を理由に特別抗告を申し立てることや、最高裁判所の判例違反や重要な法令解釈違反を理由に許可抗告を申し立てることが考えられますが、ここまで行くことはほとんどありませんし、結論が変わることもあまりありません。
遺産分割
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代表弁護士 金田 真明
東京都府中市宮町1-34-2 サンスクエアビル3階
経歴
富山県高岡市出身。
慶應義塾大学法学部法律学科、関西学院大学司法研究科卒業。
司法修習修了後、東京都日本橋にある第一中央法律事務所で勤務。
同事務所では、企業の再生や労務問題等、企業にまつわる様々な業務に携わりました。
2011年1月11日に、あかつき府中法律事務所を設立
主な対応エリア
立川市/八王子市/武蔵野市/三鷹市/青梅市/府中市/昭島市/調布市/町田市/小金井市/小平市/日野市/東村山市/武蔵村山市/国分寺市/国立市/福生市/狛江市/東大和市/清瀬市/東久留米市/
多摩市/稲城市/羽村市/あきる野市/西東京市/瑞穂町/日の出町/檜原村/奥多摩町の多摩地区/その他23区および神奈川県(南武線、小田急線沿線地域)埼玉県・山梨県など。
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